極めて精巧な偽札が誰にも気づかれずに流通したら誰が損をするのか

偽札作りは重罪

言うまでもなく、偽札を作るのは犯罪です。しかも結構重罪です。

通貨というのはそれ自体に価値はなく、「みんなが価値があると信用している」という暗黙の了解で成り立っているので、偽札が流通することでみんなが「この紙切れには価値があるのか?」と疑い始めたらあっというまに破綻してしまうからです。

なので、死刑こそないものの、殺人に次ぐ重罪に位置されています。

シミュレーション

単に作っただけで流通しない場合

ここでちょっと思考実験をしてみます。例えば私が一万円札の偽札を作っただけであれば、何にも影響はありません。誰も、得も損もしません。家宅捜索でもされて見つかったら大変なことになるでしょうが、家にこっそり飾っておくだけなら少なくとも社会的な影響はゼロです。

使ったら誰が損をするか

次にそれをお店で使うと、私が一万円得をして、お店が一万円損することになります。ここで初めて社会に影響が出ます。

お店が損をしない方法

ただそこでお店が損をしない方法がひとつあります。 バレないように使ってまた別の人に渡してしまえば良いんです。これも犯罪ですが、仮にそうした場合は、お店が損を被ることは回避できます。

誰かにバレるまでは流通し続けるババ抜き状態

日本の紙幣は非常に精巧に作られており、偽造は極めて困難です。なので少しの間バレずに流通したとしても、いつかはバレて誰かが捕まることになります。たとえ偽札だと気づかなくても、使ってバレた場合は逮捕されることになります。知らなかったでは済まされないんですね。偽札の流通がババ抜きと呼ばれる所以です。誰かが捕まらないにしても、いずれは目が利いて誠実な人が警察へ提出し、没収され、その人が損をして終わりです。

絶対にばれない偽札があったとしたら

さてここで、私が最初に作った一万円の偽札の出来が非常に良く、分子レベルまでそっくりに作っていた場合はどうなるでしょう?技術的にはともかく、原理的には可能です。そうすると、誰も偽札だと気づく人はいません。本物の紙幣と同様に普通に流通していきます。そして最終的に損傷等によって正規の日本銀行券と交換されて役目を終えたとします。

ここで問題です

問1:このケースでは、私が一万円得をしていますが、一万円損をしたのは誰でしょうか?

インフレ

ここで一旦、別の方面から考えてみます。

私は不正に日本経済に一万円を余分に付け加えてしまいました。これはほんの少しだけインフレを起こしてしまった状態です。

500兆円を偽造した場合

流通する貨幣が2倍になった場合を考えてみましょう。2018年5月時点でのマネタリーベースは490兆円ほどなので、私が一万円なんてケチな金額ではなく、ドーンと500兆円ほど偽造したと考えてください。

紙幣の価値は1/2になります。昨日まで100円で買えていたものが200円出さないと買えなくなります。(実際には一個人が国債を介さずに500兆を流通させるのは不可能ですし、追加の500兆が全体に流通するまで、そしてマネタリーベースがマネーサプライに影響を及ぼすまではタイムラグがあるのでかなり早い段階で国税庁が気づくでしょう。まあそのへんは置いといて、)こうなってしまうとさすがに一般の国民ですらおかしいと気付きます。

一万円を偽造した場合

しかし一万円程度なら誰も気が付かないんです。

不正な一万円の追加流通は、貨幣の価値を1/500億だけ下げることになります。ざっくり言うと昨日まで500億円出せば買えていたものが500億円と1円出さないと買えなくなってしまったということなのですが、日々の物価の変動のほうがはるかに大きいので、それに気がつく人はいないでしょう。

答え

ということで正解は「日本の紙幣を使う人達全員がほんのちょっとずつ損をしている」です。実質的にはほとんど誰も損をせず、自分だけが得をする状態ということになりますね。

一応

なんとなく誰にも迷惑をかけないような気がしちゃいますが、そんな精巧な偽札作りはまず不可能であることと、冒頭で言ったように、貨幣価値の目減り以上に貨幣自体の信用を損なう行為なので絶対にやめましょうね。

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