音楽ランキングがアイドルばかりになる理由

邦楽は終わっていない

AKBとジャニーズばかりのランキングをみて「邦楽終わったな」っていう意見をよく聞きますね。ただこれは短絡的すぎる意見で、そうは言えないと思います。

別に邦楽は終わっていません。むしろ発展しているとさえ思います。しかしランキングにはそれが反映されません。よく考えたら当たり前な話なんですが、それを解説していきます。

売れる音楽には2種類ある

ランキング、特に総合ランキングというステージでは以下の2種類のグループが混在しています。

  • 音楽属性:音楽を武器にしている人たち
  • 人気属性:人気を武器にしている人たち

前者の音楽属性については色んな意見があると思いますが、わかりやすく分類すれば、シンガーソングライターなんかはこっちですね。ミスチル、サザン、椎名林檎aikoなどです。両方を兼ね備えている人ももちろんたくさんいますが、アイドルは基本的に後者の「人気属性」の分類になります。

そこで、前者の「音楽属性」がランキングに現れなくなったことで、例の「邦楽\(^o^)/オワタ」論がでてきてるんですが、そうじゃないんです。

「音楽属性」の選択肢が圧倒的に増えた結果、分散しているだけ

今でも「音楽属性」のアーティストはいます。いますが、DTMや発信チャネルの発達によって数が急激に増えたことで、特定のアーティストに集中することがなくなっているんです。それに比べて「人気属性」の人たちは、基本的に仕掛け人が他にいます。そして大体は大企業です。当然、ボトムアップで雨後の筍のように現れては消える音楽属性に比べたら数は圧倒的に少ないため、みんなが同じタイトルを買うようになる。その結果、ランキングには後者の「人気属性」が圧倒的に多くなるんですね。

参入障壁の崩壊

以前は、多くの人に音楽を聴いてもらおうと思ったら、まずは大手レーベルのもとでメジャーデビューをしないと話になりませんでした。そのためには地道なライブ活動、オーディションなどをコツコツをする必要がありました。そもそもバンドが組めなければ、一人では何もできませんでした。

しかし、いまはMacにはGarageBandが無料でバンドルされていますし、一人でDTMですべてのトラックを作り上げることが非常に簡単になっています。楽器が弾けなくても、MIDIで打ち込むか、もしくはサンプリングをペタペタすればそれなりのトラックが完成します。そしていちいちメジャーデビューなどしなくても、曲ができた直後にYouTubeSoundCloudにアップすれば世界中に発信することが出来ます。

日本中、世界中の人にチャンスが爆発的に広がったことで音楽は活性化しています。もともとレッドオーシャンだったところに、参入障壁がなくなっているので、以前にもまして世界中でセンスとセンスのぶつかり合い、音楽ファンの耳の奪い合いが行われています。「音楽属性」と「人気属性」の合計同士を比べたら、圧倒的に「音楽属性」の方が聴かれているはずです。

プレイヤーが増えると質が上がる

そうすると、競争原理によって質は上がっていきます。冒頭で、むしろ発展しているとさえ思うと言ったのはこれが理由です。しかし、決してランキングには上がってきません。もはやランキングは「音楽属性」の人たちのステージではないのです。

終わってるのは「ランキング」か、もしくは「未だにランキングを気にする人々」

ランキングっていうのが昭和〜平成にかけてのテレビ・ラジオ世代には意味があったんですよね。「みんながこれを聴いてます、なのであなたも聴きましょう」っていうノリです。戦後の復興の「一致団結」の名残でしょうか。

しかし、現代のインターネット世代においては、それぞれが好きなものを聴いて満足し、他人が何を聴いているかにはあまり意義を見出しません。

f:id:smartnewstorage:20180623221414j:plain

なので、ランキングっていう「これがいま大衆に売れている」っていう指標自体がもう役割を終えたんじゃないかと思います。

そして、売れている音楽が良い音楽っていうものでもないので、「音楽業界の単なる売上報告書」に成り下がったランキングの結果を見て、邦楽の質がどうのこうの言ってる時点でちょっとズレてるということだと思います。

実はアイドルも質が高い

一応、フォローというわけではないんですが、「人気属性」の筆頭であるアイドルの楽曲も、実は質が高いものが多いです。なぜなら、前述したように大企業が仕掛け人なので、なんとか売れようとカネとコネを総動員します。曲作りには人気のアーティストや腕の確かな大御所をアサインし、そして高度なマーケティング手法を駆使して殴り込んできています。実際、ランキングに上がってくる曲は圧倒的に音が洗練されていて、シズル感があり、キャッチーです。元々は前者だった「音楽属性」のアーティストをプロデュースしてアイドルに仕立て上げているケースも多々あります。

音楽は終わらない

というわけで、CDという流通媒体が死に、ランキングが死んでも、音楽は死にません。少なくとも、皆が耳にイヤホンを突っ込んでるうちは不滅です。